「お前、生きて帰れると思うなよ」

「く、久遠くんが絶対に助けにきてくれるから、大丈夫です」


久遠くんは、不器用で、弱いところもあるけど、この世で1番頼れる人だもん。


……運動神経が絶滅的な私には、もう久遠くんを信じるしかないし……。


「おい皇河!コイツの面倒見とけ!」

「……はい」


リーダーらしき人にそう命令されて、私の元に近寄ってきた皇河と言う人。


「……大人しくしてろ。そしたら早く家に帰れるからな」

「……っ」


優しそうな瞳が、怖気付いている私に注がれる。


儚くて切ない声色。

この人、もしかしたら操られてるのかな……?


「……どうしてこんなことするんですか?」

「金がないから」

「働けないんですか?」

「……どうでもいいだろ」

「……失礼しました」


この人の私情を聞き出したって、なんの役にもたたないんだ……。
 
でも、こんなに切ない顔をされたら心配になっちゃうな……いくら誘拐犯だからといえ。


そういえば理人くんもレッテルを貼られてたし、この人もそうなのかもしれない……。


「……いつ私は帰れますか」

「なんでそんなに話しかけてくるんだよ」

「ひとりぼっちじゃ寂しいからです」


孤独で不安に浸るよりかは、安心のために帰れる日を教えて欲しい。