くんくんと周りの空気の匂いを私は嗅いでいた。


理由といえば、いつもとはちがう匂いがしたからだ。


いつもは薔薇のようなお花の匂いがしているのに、今日は甘い香りがする。


私は元々嗅覚に優れていたのですぐに気がついた。


さすがにこれは深読みしすぎかと思うけれど、もし私が本当に誘拐されるとして、この匂いは睡眠薬の可能性が高い。


その瞬間、プシューと音がして、甘い香りが部屋を包み込んだ。


咄嗟に口と鼻を塞ぎ目を瞑る。


そして数十秒がたち、空気が薄れて顔を隠したいかに悪そうな人たちが教室に入ってきた。


私は一応気絶したふりをして大人しくする。


ううっ……パパに鍛えられてて、よかった……。


実は、一応私のパパも久遠くんの会社を支えるべく、とある会社の社長で、もしなにかあった時のため、と、睡眠薬や毒薬など、そこら辺の勉強もさせられていたのだ。



そして私は目隠しをされおそらく車の中に入れられて、かれこれ何十分かかかって、誘拐犯のアジトらしき場所に着いたのだった。


「じゃあ……あとは身代金だな」

「おい起きろ」

「……なんですか……?」


わ、私お金取られた後に殺されちゃうのかな……!?