い、いやだっ……。


この時、私は私の本能的に危ないと理解をした。

「お、落ち着いてくださいっ……」

「落ち着くってなにが?」

「え、えっと……」

「ってか、仁に壁ドンされてドキドキしてたわけ?」


……ふぇ?


ど、ドキドキしてないっ……!


「な、なんでそうなるの!!」

「なんでって、ずっと見てたから」

「え!?あっ……!!も、もうこんな時間……!!」


こうなったら意地でも帰るしかない!!


「さ、さよならっ!!」


久遠くんがいない方の教室のドアから廊下に出て、早歩きをして階段を降りる。


「待って」

「やだっ!!」


案の定追いかけてきた久遠くん。


「待てってば」


グイッと手を引かれて、私は久遠くんに抱きしめられた。


「っ……私、ドキドキしてないもん……」

「いまは?」


っ……。心臓うるさいっ……。


「してる、よ……」

「ん、そっか」


そんなに嬉しそうになでなでしないっ……。

でも、久遠くんの胸から、ものすごいスピードの鼓動が聞こえる。


「久遠くん、ドキドキしてるっ……?」

「うん。してるよ。だってこんなにチビで可愛い天音が自分の中にすっぽり収まって抱きしめられてて、その可愛さに我慢しろって言う方が無理でしょ」


っ……。