「……俺さ、誘拐されるかも」

「……へっ?」


な、なに言ってるの?


本当ならば相当ヤバいことを久遠くんはただただ優しい笑顔で私にそう伝えてくる。


「いや、さすがに上杉の後継となれば命も狙われるよ。あははー」

「な、なんでそんな簡単にっ……」


た、たしかに、上杉財閥の力はおかしいくらいなのだから、狙われて、身代金だとかそういうことがあってもおかしくはないんだろうけど……。


「や、やだよぉっ……行かないで……」

「……寂しい?」

「久遠くん、いなくなったらやだっ……」

「ふふっ、そっか」


目元がジーンと熱くなってくる。


久遠くんは怖くないのかなっ……?

私は、久遠くんがいなくなっちゃうことが、ものすごく怖いのにっ……。


「なーんってね。天音が心配してくれる顔が見たかっただけだよ」


……またそうやって、私の頭を優しく撫でてって……。

それは、本当なのっ……?


わかんないよ……。


「……だめだからね」

「ん?なにが」

「私から離れたら、めめだよ」


そう言いながら久遠くんの綺麗で大きな手を自分のチビな手で挟んだ。


「っ……そんなことくらい、わかってるよ」

「えへへ、いい子いい子」


今度は私が久遠くんの頭を撫でる。