蘭くんに守られて、その後は先生が教室に駆けつけ、いまは何事がなかったかのように授業が再開された。


「……天音……早退した方が……」

「大丈夫だよ、陽奈ちゃんっ……!」


もう、大丈夫だ。

「大丈夫なわけっ……!」

「センセー」

「どうした上杉」

「天音サンと行きたいところがあるんで連れてってイーですか」


無気力に久遠くんがそう言いながら、私の方を見て優しい笑みを浮かべている。

私の身体はゾクリと震え上がった。


「……わかった、いいぞ」

「……えっ……」


嘘、でしょ……?

いくら久遠くんだからといえ、そんなのおかしいよ……。


「じゃあ天音、行こうか」


瞬間移動したかのように早く久遠くんは私の目の前に立っていた。


「ちょ、やめなさいよ!!」

「天音ちゃんから離れろ!!」


クラスのみんながそうかばってくれても、力無しに私は軽々と抱き上げられた。


「……変なことはしないよ。ただ、図書室に行くだけ」

「図書、室……?」


なんで……?

ぷるぷると身体が震える中、そのまま図書室に連行された。


……落ち着く本の用紙の匂いがする。