天音は俺にぎゅっと抱きついた。


「……ふふっ、あは、あはははっ!!」

「な、なんでよ気持ち悪い」

「なんでお前は俺の天音に触ってるわけ?」

「だからお前のじゃねぇだろ!!」


俺はこんなヤツに日和るヤツじゃない。

わかってるけど、尋常じゃないコイツの殺気に打ちのめされそうだ。


そして、次の瞬間だった。


久遠が、思い切り俺を殴ろうとしたのだ。


でも、それは実際天音を避けたのか、天音ごと俺を殴ろうとしたのかわからない。


俺はただ攻撃を避けようとしたその瞬間、颯が久遠の拳を片手で止めた。


「お前……いい加減にしろ」

「チッ……」


珍しく颯は本気で怒ってるらしく、教室の空気が一気に冷たくなった気がした。


「……久遠く……ん……」


震え切った声で天音が喋り始める。


「どうしたの?」

久遠はにこにこと微笑んでいる。


あり得ないほど恐ろしく目が笑ってないけれど。


「嫌い……」

「……?」


天音の言葉に久遠はハテナマークを頭の上に浮かべるような顔をした。


「……それで?」

「っ……」


俺の胸で泣いている天音の頭を優しく撫でる。