その後、天音の家の前に車を用意させて、車に乗り颯の屋敷に向かう。

そういえば、たしか颯は今日は陽奈を屋敷に監禁するって言ってたような……。


颯の屋敷に付き。


ガチャン


仲がまあまあいい颯の屋敷には勝手に出入りが許可されている。

ただし、陽奈がいる時以外だけれど。

「颯——」

「殺ず……でめぇは殺す!!!!」

包丁を俺に向けて持ちながら走ってきた颯を軽々と避けた。


「せっかく陽奈ちゃんとイヂャイヂャしでだのに……お前のせいで!!!うゎぁぁぁぁ!!!!!」

……。


颯はいつもこうだから、もう見慣れたが。


「颯に相談があるんだ、いいか」

「チッ……なんだよ」

「よう——」

「それ以上神様の名前を口ずさむな」

いちいちいちいちめんどくせぇヤツだな。


「……俺が嫁と喧嘩したんだよ」

颯を面倒くさいと思っても、天音の名をコイツに聞かせるのも嫌だと思ったので俺も天音を思わず嫁と呼んでしまった。


「へーで。いまは女神様の優しさに誓って話を聞いてやる」

「……天音が、俺のこと好きだった」

「……うん」

「それで、天音は俺が天音のこと好きじゃないと思って、追い出された」

どこまで鈍感なんだよ、天音……。


「お前ら本当鈍感だよな、見ててムカつく」

「……信じらんねぇだろ」

天音、俺のこと好きなのかなってメンヘラ起こして思うことは何度かなかったわけではないけれど、そんな夢のようなこと俺にあっていいのかわかりなかった。