「ふふっ、久遠に言いたいこと言えたのは、天音が気を許したからじゃないの?」

「そ、そんなことは……」

ないと、思うけど……。

ううっ……陽奈ちゃんが優しく頭を撫でてくれると、なおさら涙がぁっ……。


「っぅっ……ひっく……!」

「ほら、よしよし。」

「もう、久遠くんと話せないよぉっ……!!」

「……なに言ってるの」

「へっ?」


もう、久遠くんに会うこともできないし、話すこともできない……。

「いや、婚約してんだからこんなん喧嘩でしかないでしょ」

「ええっ……う、っ嘘でしょ?……」


そういえば……婚約してたんだ……。


そして私は右手の薬指に妙な違和感を感じた。

「なんだこれっ……?」

輪の部分がピンク色で、ダイアモンドが埋め込まれている指輪が指に通っていた。


「……婚約指輪ね」

「婚約、ゆび、わ……?」

なんでそんなものが私の指に……。


「久遠が寝てる時にきっとつけたのね」

「こんな指輪っ……!!」


可愛らしい指輪を握りしめて、指から引っこ抜こうとするけど……。

「外れ、ない……」

「……かわいそうにね」

「っぅっ……久遠くんのバカやろう……」


本当にバカなのは、私で……。


でも、久遠くんが私を惑わすのが、1番悪い。