アブラは満席になったら出発するらしいのだが、ひっきりなしに人が来るので、どんどん出港する。

 大きな川のあちこちに、この赤い屋根の渡し船がいて、いろんな国の人が乗っていた。

 天気がよく、風も冷たくなく、いい感じだ。

「なんか楽しいですね」
と真珠は桔平に微笑みかける。

 狭いので、真横に座っている桔平の顔は近い。

 桔平は少し照れたように言ってきた。

「そうか。
 まだ着いてもないんだが……。

 まあ、お前が楽しいのならよかった」

 運転手さんは床に空いている穴の中に立ち、その中にある舵を足で操作して船を走らせている。

 ……器用だな、と思いながら、ビル群が建ち並ぶ今のドバイの街からは想像もつかない、対岸の旧市街の町並みを眺めているうちに、船着場に着いていた。