ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

 確かに子どものころは、
「僕の大切なお姫様。
 幸せになるんだよ」

 そう言って、父は大事に育ててくれた。

 でも、会社が困ったら、簡単に私をあなたに売り飛ばしてしまったんですよ……。
 そう思いながら、

「私にだって、夢はあったんですけどね」
と真珠は愚痴る。

「なんの夢だ」

「素敵な結婚をするとかですかね?」

「ほう。
 どういうのがお前が思う素敵な結婚なんだ」

「そうですね~。

 まず……

 まず、必要なのは、素敵な旦那様ですかね?」

 特に深くは考えていなかったので、そんな当たり前のことを言ってしまう。

「……ザックリしすぎてるな。
 素敵な結婚とか、素敵な旦那とか。

 そもそも、一体、どういうのが素敵な旦那なんだ」

「そうですね。

 まあ、やさしい人で……

 やさしい人で……

 まあともかく、私が好きになった人ですよ」

「他の条件は?」

 ありません、と真珠は言った。

 桔平はちょっと困った顔をして言う。

「……それは世界一難しいな」
と。