ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

「……泳いでですかね?

 それか因幡の白兎みたいに、どんどん隣のヴィラに飛び移ってって、陸地を目指すとか」

 並んだワニの背を飛び、海を渡ろうとして失敗したウサギに例え、真珠は言ったが。

「……途中で、ワニじゃなくて、サメに襲われるんじゃないか?」

 阿呆なこと言ってないで座れ、と言われてしまう。

「そうじゃない」

 そうじゃないんだ、真珠、と桔平は言う。

「俺もようやく落ち着いてきたから。

 ……俺とちゃんと結婚しないかと訊いてるんだ」

「えっ?」

「名ばかりの夫婦じゃなく。
 俺と暮らさないか。

 日本にいることはあまりできないかもしれないが」

「な、何故ですか?
 ちゃんと結婚されたいのなら、他のちゃんとした方を探されたらいいじゃないですか」

「お前で一応、ちゃんとしてるだろう。
 出自も悪くないし、礼儀作法もきちんとしている。

 ……なにより、お前のご両親は立派な方だ」

 えっ?
 娘を売り飛ばしたあの父もですかっ? と思ったが、桔平は、

「お前をちゃんといい娘に育て上げているじゃないか」
と言う。