ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

 


 朝、ふかふかのベッドで真珠は目を覚ました。

 潮の香りと枕許に置かれたキャンドルの甘いバニラの香り。

 ……そういえば、私、有坂さんとハンモックで寝なかったっけ?

 起きて窓から覗いてみたが、水上ハンモックには桔平の姿もなかった。

 有坂さんが運んでくれたのかな、と思いながら、真珠は桔平を探してみる。

 桔平は奥のベッドルームで眠っていた。

 カーテンも窓も開いたままで、高くなった日が容赦無く差し込んでいるが。
 桔平はぐっすり眠っていた。

 寝ていても乱れなく整っている顔を眺めながら真珠は思う。

 お疲れのようなのに。
 なんでわざわざここまで来たんだろうな~。

 私を呼んだ手前、相手してやらないといけないと思ってくれているのかな?

 でも、そろそろ起こさないと仕事だよね。

 仕事、何時からなんだろ?

 モルディブの方がドバイより一時間早いけど、それにしても、そろそろ……と思ったとき、パチリと桔平が目を覚ました。

 一拍置いてスマホの目覚ましが鳴る。

 むくりと起き上がった桔平はそれを止めながら、
「鳴る直前にいつも目が覚めるんだ」
と言う。

「じゃあ、目覚ましかけなくてもいいんじゃないですか?」

「いや、たぶん、目覚ましをかけることで暗示になってるんじゃないか? おや」
と桔平はスマホを覗き込んだ。