ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

 



 風呂を出た真珠は広いヴィラの中、桔平が何処にいるのかつかめないまま、外に出る。

 海に向かって張り出しているデッキから、カラフルなクッションの置かれた水上ハンモックに乗る。

 襲われないよう、ここで寝ようとしたのだ。

 だが、持ってきたブランケットをお腹にかけたとき、何処からか視線を感じた。

 ふと見ると、ハンモックの真上にある窓からグラスを手にした桔平がこちらを見下ろしている。

「そこにいても充分襲えるぞ」

 ひっ。

「襲いたい気分のときは、何処からどうやっても襲えるぞ。
 っていうか、そこで寝たら、まず、虫がお前を襲うぞ」

 虫っ、と起き上がった真珠は慌てて海に落ちかける。

 だが、窓から下りてきた桔平が抱きとめた。

「まあ、ここ、あんまり虫いないけどな」

 うん、いい風だ、と桔平は飛び降りたせいで揺れるハンモックから夜の海を見て言う。

「今日はここで二人で寝るか」

 揺れても桔平にはあまり寄りかかるまいと真珠は頑張っていたが。

 お腹に手を回されて抱きとめられているので。

 バランスを取ろうと前方に両手を突っ張って振る真珠は、まるで親の腕から身を乗り出して、あわあわ言っている子どものようだった。

 そんな真珠を見て笑った桔平は真珠を抱いたままハンモックに転がる。