ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

「そのすっごい楽しい会社とやらをなんで辞めたんだ」

 そう問われ、真珠は沈黙する。

「なんだ。
 男と揉めたのか」

「いや、何処から男の人が出てきたんですか。
 ……この話、特に語りたくはないんですが」

「何故だ」
と言われたが、

 いや、あなたへの恨み言になるからですよ、と真珠は思っていた。

「気になってはいたんだ。
 やり甲斐のある仕事だと言ってたろう。

 だから、それを辞めさせて呼び寄せるのも悪いなと思って、お前を自由にしていたのもあるのに、何故、辞めたんだ」

 いや、私は形だけの妻なのに辞めさせようとすることがおかしいですが、と思いながら真珠は言った。

「訊きたいですか?」

「そうだな」

 ヴィラの玄関へと続く階段には、点々とランプが置かれていた。

 その前で真珠は立ち止まる。

「いや、あなたへの恨み言になってしまうので言いたくはないんですが」

「何故、そこに俺が出てくる」

 真珠が黙っていると、
「戸籍上でも夫婦だろう。
 なんでも言え」
と桔平は言ってくる。