ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

「ロープで降りてくるんですか?」

「……普通にヘリポートに降りるよ。
 何者だ俺は」

 眉をひそめる桔平の頭の中でも、真珠の妄想と同じように、桔平は怪盗のようにマントをひるがえして、ロープにつかまっているようだった。

 笑ってしまう。

 真珠は桔平の腕に抱かれたまま、庭を見た。

 気づくと桔平も外を見ている。

「私たち、見てますね、谷中で朝顔」

 真珠はドバイで桔平に言った。

 あの谷中の、夕焼けどきにはちょっと切なくなるような風景の中。

 縁側から庭先の朝顔を二人でそっと眺めて微笑むような。

 そんな人生を送りたい、と。

 それはキラキラした桔平の世界とは真逆の世界だろうと思って言ったのだが。

 今、こうして、桔平に抱かれて、その朝顔を見つめてる――。

「ヘブンリーブルーだな」
「え?」

「このずっと咲いてる朝顔、ヘブンリーブルーだろ。

 花言葉は『堅い約束』」

 俺たちにピッタリだな、と桔平は言った。

「お前は約束通り、困っている俺を助けに駆けつけてきてくれた」

 自分を見つめる桔平に赤くなりながらも真珠は言う。

「有坂さん、なにも困ってなかったじゃないですか」

「……困ってたよ、ずっと。
 五年の間、お前に逢いたくて」

 そう言いながら、桔平はそっと口づけてくる。