ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

「そうですか。
 では、覚悟が決まったら言います」
と真珠が言うと、

「そうか。
 言えたら、キスしてやろう」
と言いながら、桔平は真珠の顎を手でつかみ、逃げられないようにして口づけてきた。

 ……いっ、言ってることと、やってることが違うんですけどーっ!?

 そう真珠は逃げかかったが、桔平は平然と言ってくる。

「今のは俺がしたくしてしたキスだ。
 お前がキスしてくださいと言ってするのは、このあと、いつか未来でするキスだ」

 真珠がその言葉を口にする日は来ないか、来ても遥か先だと思っているようだった。

 ほんとうに困った人だ……と思いながらも、真珠は桔平に抱き締められていた。

 でも、これで完璧になったな、と真珠は思う。

 有坂さんの香りが混ざって初めて、この乳香の香りは完成する気がする。

 真珠は目を閉じ、その甘い香りを嗅いだ。

「……日本に戻ってから、お父さんに電話したんです」

 桔平の腕の中で真珠はそう言った。

「なんだ。
 俺にお前を売り飛ばしたことの文句を言いにか」

「いえ……。
 自分でもなにを言いたかったのかよくわからないまま電話してしまったんですけど。

 そしたら、お父さん、すべてを察したように言いました。

『幸せになれたろう。
 僕の大切なお姫様』って」