ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

 


 ドバイと違い、冷たい風の吹く日本の夕暮れ。

 真珠が縁側に出ると、まだ咲いているあの朝顔が出迎えてくれる。

 はかなさより、しぶとさを感じるこの朝顔が真珠はなんだか好きだった。

 古い木塀の向こう、女子高生たちが楽しげに通り過ぎていく。

 谷中に帰ってきたんだな、と真珠は、しみじみと思った。

 七輪出して、サンマでも焼くかな、と思いながら中に入る。

 暗く狭い廊下の天井から吊り下げたモザイクガラスのライトが目に入る。

 日が暮れてきたので、パチリとつけてみた。

 カラフルなガラスが暖色系の灯りに輝き、廊下を照らし出す。

 ここに三つつけたいんだけどな、本当は……と思いながら、そのブルー系のモザイクガラスを眺めていた。

 近いうちに、佳苗さんたちに連絡とってお土産持っていこう。

 そんなことを考えながら、七輪の前に米をとごうと真珠は台所に向かった。

 流し台に置かれたままのお好みソースが目に入る。

 昼、お好み焼きにしたので、買ってきたのだ。

 原材料の中のデーツの文字を見ながら、真珠は、

 こうしていると、なにもかも夢だったような気がしてくるな、と思っていた。