ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

 


 真珠は完全個室のファーストクラスがある新型機で日本に向かっていた。

 今、誰とも顔を合わせたくない気分だったからだ。

 来るときに乗ってきた便は、シャワーもバーラウンジもあったが、扉を閉めても上の部分が空いていた。

 だが、この機体のファーストクラスは扉を閉めてしまえば、本当に密室になる。

 真珠は混乱した頭のまま、遠ざかるドバイの街を見下ろしていた。

 今日は霧もなく、こんな時間でも街は輝いている。

 あの光のどれかが有坂さんがいるホテルなのか、とぼんやり思った。

 あのままずっと、あの腕の中でまどろんでいれば幸せだったろうに。

 でも、ちょっとショックだったから、と真珠は思う。

 私、あんな簡単に男の人と関係を持ってしまうような軽い女だったのか。

「いや、なにも簡単じゃなかったが……」

 それも、まともに話すようになってから、数日しか経っていない人と。

「いや、結婚してから、五年経ってるが……」

 そんないちいち桔平が突っ込んできそうなことを思いながら、真珠は真っ白な布団を被る。

 だが、ぎゅっと目を閉じても、砂漠で夕日を背に笑った桔平の顔が今そこにあるかのように、くっきり頭に浮かんで見えた。