ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

「何処行っちゃったんですかね~?
 他のホテル?

 それか、お友だちになったご老人の家ですかね?」

 どうせ、カップルのちょっとしたイザコザなんだろう、という感じだった。

 だが、桔平は、
「なんかあいつ、ものすごい勢いで遠くに逃げ去ってそうな気がするぞ……」
と怯える。

 手を出そうとしただけで、このホテルまで逃げていた。

 手を出したあとなら、もっととんでもない遠くまで逃げてそうな気がする、と思ったのだ。

「じゃあ、カイロとかですかね」
と言って、侑李が笑った。

「行きそびれてますからね。
 笑って旅してるかもしれませんよ」

「……さすがに今、笑って旅はしてないと思うが。
 カイロ便って、今、あったか?」

 そこで、ふと気づいたように侑李が言う。

「そういえば、成田行きの便なら、ちょうどありますよね。
 中峰さんが乗ろうとしてるやつ」

 二人は沈黙した。