ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

 何故、私なんですかっ? と逃げ越しに真珠は桔平に訊いた。

 どう考えてもこんな人が自分を好きとか信じられない気がしたからだ。

「あなたが狙えば落ちない女なんていないでしょうに」

「そうかもしれないが、狙ったことがないのでわからない。
 そもそも、お前以外、狙うつもりもない」

 ……俺が嫌いか? とまた問われる。

「……嫌いではないです。
 あなたの仕事ぶりを知って、尊敬はしてました」

 真珠は桔平の本気に応えようと、頑張って、迷う心の内を整理するように話してみる。

「子どもの頃、まだうちが裕福だった頃、よく泊まっていた歴史あるホテル。

 廃業寸前だったのをあなたが買い取りましたよね?

 常連さんたちはみんな、不安がっていました。

 今どきの若造が、みんなの思い出の染み付いたこのホテルをどんな風に変えてしまうんだろう、とか。

 でも、あなたは新しいものを取り入れながらも。
 ちゃんと私たちの愛したホテルの雰囲気をそのまま残してくれた」