ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

 


 逃げてしまった……。

 ちょっと気持ちの整理がしたくて。

 真珠は観光客が行き交う、夜でも明るいドバイの街をトボトボ歩いていた。

 なんか望み通り、異国の街で迷子になっている。

 っていうか、まず、私の気持ちが迷子になっている、と思いながら、通りを歩き、ここなら私でも泊まれそう、と思ったビジネスホテル風のホテルの前で足を止めた。

 中に入り、カウンターで空いている部屋はないか、自分では、ちょっとつたないと思っている英語で訊いてみる。

 幸い、空いていたようで、ホッとしたとき、後ろから、ぬっと手が出てきた。

 その大きな手がカウンターに置かれ、背後からよく嗅ぐ香りがした。

「いや、その部屋ダブルで」

 桔平が真後ろに立っていた。

 有坂さん~っ。

 桔平は流暢なアラビア語で話をまとめてしまう。

 真珠を見下ろし、
「俺もちょっと心の整理がしたくなったから、部屋に帰らず、ここに泊まろうかと思う」
と言う。

 いやあの、あなたも一緒だと、私はなんの心の整理もできないのですが……と思ったが、そのまま部屋まで連れていかれた。