ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

 真珠は中峰に向かい、頭を下げた。

「ごめんなさい。
 先輩のことは尊敬してるし、とてもいい人だと思うけど。
 結婚はできません」

 真珠は桔平をチラと振り返り言う。

「……私はこの人に呼ばれたら、いつでも駆けつけないといけないから。

 この人と結婚したのは、よくわからないご先祖様の因縁と、うちの父親の経営手腕のせいだけど。

 でも、この人に呼ばれたら絶対駆けつけなければと思っているのは、それでじゃなくて」

 私が駆けつけたいと思ってるから、と真珠は言った。

「有坂さんは、親に叩き売られた私に、好きにしていていいと言ってくれて、自由をくれた。

 だから、私はそのことに感謝して。

 有坂さんと結婚してから、どんなときもスマホを離しませんでした」

 いつ呼ばれてもいいように―― と真珠は言う。

 それで、桔平と一緒にいるようになってからは、あまりスマホを見ないようになっていたのだ。

 ただ、桔平と戸籍上の結婚をしてから五年。

 スマホをずっと握ってはいたが、呼ばれることはないかな、と思ってはいた。

 仕事に私生活にと充実しているのだろう、この人の世界に、私は必要ないかな、と思っていたからだ。

 だから、電話番号も登録してはいなかった。