ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

 


 真珠たちはホテルの広いバルコニーに上がった。

 大きなソファやアラビアンなデザインの布製のクッションがずらりと並んでいたが。

 滅多に雨の降らないドバイでは、特に天候を気にすることもなく、出しっ放しのようだった。

 ところどころ、ランプが置かれているが、かなり暗く、真珠は桔平に手を引かれながら、端の方まで出てみた。

 他にも人影は見えたが、広いので、距離があり、二人きりでいるかのように感じる。

 日が差さないせいか、高台に吹きつける風はかなり冷たく、充分着込んでいるのに身震いしてしまった。

 桔平が自分のコートをかけてくれようとする。

「いえいえ、大丈夫ですよ。
 カイロもたくさんあるので。

 いりますか?」
と逆に桔平の手にひとつ握らせたが、

「いや、お前にかけてやって、格好つけたいんだ。
 かけさせてくれ」
と何故かお願いされ、着だるまな上に、さらにコートをかけられる。

 やはり寒いのか、ぎゅっとカイロを握っている桔平が可愛らしく感じられ、少し笑って真珠は言った。

「こうしていると、なんだか暗闇の遺跡にいるみたいですね」

 石造りの建物の中、わずかなランプの灯りに照らし出された自分たちの影を見ていると、ちょっとそんな雰囲気だ。