ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

 


「そういえば、砂漠から戻ったとき、中庭で有坂さんだと思って話しかけてたの、ラクダだったんですよ」

 しかも、生きてない、と真珠は言った。

 乗って写真を撮ったりできるラクダの彫像だったのだ。

「だろうな」
と桔平は部屋に入りながら言う。

「なんで、だろうな、なんですか?」

「いや、生きてるラクダなら、じっとお前のくだらない話を聞いてないだろうよ」

 いや、ラクダに私の話がくだらないかどうか判断できるんですかね……。

「ちょっと呑むか」

 アラビアの王様の寝室みたいな部屋にあるミニバーを見ながら桔平が言う。

 さっき、もう結構呑みましたよ、と真珠が言うと、

「まあ座れ」
と桔平はキングサイズのベッドに腰掛け、自分の隣を叩く。

「……いえ、結構です」

 逃げ腰な真珠を冷ややかな目で見て桔平は言った。

「この部屋、ベッドひとつしかないぞ」

 ええっ? と真珠は辺りを見回す。

「ベッドルームって、普通、二、三個ありますよねっ?」

「所詮はお嬢様か……」
と桔平は鼻で笑ったあとで、

「新婚さんの部屋には、ベッドはひとつでいいだろう。
 なあ、第三ラジオ体操」
と小莫迦にしたように言う。