「それでちょっといい雰囲気で呑んだんだ」
ホテルの廊下を歩きながら、桔平は機嫌よく侑李からの電話に出ていた。
へー、と言う気のない返事に、
しまった。
こいつ、真珠が好きなんだったな、と思い出し、
「いや、だが、……うん。
なにも進展ないから」
と弁解のように言ったが。
「いや、なくてどうするんですか。
いきなりそんなところまで真珠様のために行ったのに。
私に変に気を使ってくれなくていいんですよ。
ちゃっちゃとくっついちゃってください。
あなたがた、もともとご夫婦なんですから」
と素っ気なく侑李は言う。
「いや、形ばかりの夫婦なんだが……」
そう言いかけた桔平は足を止めた。
ランプの灯りに照らし出された石造の白い廊下の先を見知った影が横切った気がしたのだ。
「今、真珠が……」
「は?」
「部屋から出るなと行っておいたのに」
「過保護ですね~」
と呆れたように言う侑李に、
「なに言ってんだ、真珠だぞ。
こんな複雑な構造の広いホテル、迷子になるに決まってるだろっ」
と言うと、真珠とドバイ観光をした侑李も、
「ああまあ、確かに」
と言う。



