ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

「なんで、ドバイまで行ってんのよ。

 あっ、そうか。
 ドバイってあちこち建築中だし、外国人労働者もたくさん雇ってくれるらしいし。

 それで出稼ぎに行ってるのかしら、旦那」

「それなんだけど、誰が出稼ぎに行ってるって言ったの……?」
と吉田に言われ、佳苗は、

「え? 社食のおばちゃん」
と答えたあとで、

「そういえば、あの子、社食のおばちゃんたちにも花木って呼ばれてたのよね。
 前の会社も花木の名前を使ってたから、それでお願いしますって言われたって、おばちゃんたち言ってたけど。

 社食に前の仕事のキャリア引き継ぐわけでもないのに、なんでずっと旧姓使ってたのかしらね?」
と言う。

「……ドバイですか。
 実は僕、高校のときの先輩がドバイにホテル建ててて」

 よく相談に乗ってくれるいい先輩なんです。
 すごく格好良くて尊敬できる」

 先輩は今でも僕の憧れなんですと中峰は言った。

「僕、先輩頼ってドバイに行ってみますっ」

 すごいっ!
 男だ、中峰っ、と他のみんなが起きないよう、佳苗たちは小さく拍手する。