ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

 


 真っ暗な砂漠のど真ん中に、いきなり、たくさんの灯りに照らし出された宮殿のようなものが現れた。

 不思議な空間だな。

 っていうか、こうして見ると、灯りって贅沢だな、と真珠は思った。

 その砂漠のホテルにチェックインしたあと。

 もう夕食は食べていたが、誰もいない砂漠まで移動し、そこにセッティングしてもらった篝火に照らし出された場所で、軽い食事をし、お酒を呑む。

「不思議ですね……。
 滅多に会わないあなたと、こうして砂漠の月を見上げてるなんて」

 桔平は少し迷うような顔をしたあとで訊いてきた。

「お前、さっき、俺がいないとき、スタッフと話してたろ。
 アラビア語で話しかけられて頷いてた。

 いつもの適当か?」

 ははは、と真珠は笑い、言った。

「ところどころしかわからなかったので、ある程度適当に頷いてました。

 言ったじゃないですか。
 絵本程度のアラビア語しかわからないと」

「ほんとはあの日の会話も聞き取れてたんじゃないのか?
 海中レストランで……」

「ドバイに着いた次の日、海中レストランでご挨拶した紳士が、私と会いたいとおっしゃってた方なんですよね?」

 そう、自分がここにいる理由なんて、ほんとうはもうなかったのだ。