『学校はどうだい?友達とかはいるの?』


「えぇ、すごく楽しいです。少し子供っぽいけれど賑やかで優しい友達が1人いて、」


『それはよかった。あ、そうだ理沙、卒業したら君には僕の事業の事務作業全般を任せたいと思ってる。そこの責任者として───』



高校生らしい日々の話は建前ということだったらしい。

今は海外にいる婚約者───大手化粧品会社、佐野グループの1人息子である御曹司は画面の先で仕事の顔に戻った。


決まっている日の決まった時間に行われるリモート対談が今日も終わって、パタリとパソコンを閉じる。



「───碇、いるんでしょう?隠れてないで出てきなさい」


「っ…!た、たまたま通りかかったものですから…!」


「部屋の中を?おかしいわね、廊下は外なのに」


「そっ、それは…」



帰省していた実家にて、広い部屋の物陰から姿を現して言い訳を必死に探している執事は、私が14歳のときからの専属。

執事学校を卒業したばかりで当時20歳だった碇も今では23歳。


私より6歳年上、いろんな意味でCランク止まりの嘘が下手な男が、九条 理沙の専属執事だ。