「もしかして早瀬さん、エマがまだ何も理解してない状態で手だした?」


「……なにもではないだろ。少しずつ俺だって教えてた」


「女は外、男は中。それが男女のエロに対する理解の差だよ」


「……」



そりゃこうなるだろ───と、燐のあっけらかんとした反応だけが浮いていた。

対する真冬くんは居たたまれなさそうな顔で、ばつの悪そうな顔。


そして私はくらっと揺れそうな脳でギリギリ耐えていた。



「どーすんだよこれ、このままエマが餓死なんかしたら。ねぇアリサ」


「そ、そうね…、この子がこんなになっちゃうなんて……」



燐がペシペシとほっぺを軽く叩いても無反応、びよーんと伸ばしても無反応。

もはや無我の境地に行ってしまっているエマ。



「エマー?頭から水被る?」


「ふざけんな、駄目に決まってんだろ」


「ならもうあとは自分で責任持って頑張れよSランク」



なにもできなかったことが申し訳ないと思いつつ、でも自業自得じゃないかしら……とも。

私の手を引いてリビングを出ようとした燐は、なにか思い付いたようにクルッと振り返った。



「もしかすると、もう1回同じことすれば目が覚めるパターンもあるかもね」


「っ!ちょっと燐…!そんなのしたらエマ本当にどうにかなっちゃうじゃないっ」


「どうにかなって今なんだよ、アリサ」