「……小雪、本当に行くの?」
「当たり前だ」
「かなり危ないってこれは。こんな変装すぐ見破られてしまうよ」
「だったらお前はそこに隠れていればいい」
商人に紛れた格好をした私と景秀。
そこは港が広がる船場。
鎖国のはずなのに、そこには大きな輸入船が留まっていた。
「…よし、今だ」
監修の目が紛れた頃合いを見計らって、その先にある倉庫へと気配を消しながら向かう───が。
「待って小雪、」
「…なんだ、」
ぐわっと襟を掴まれてしまえば物理的にも引き戻される。
やっぱり男はズルい…。
それに、こいつは見た目とは裏腹に力があることを知った最近。
情報屋であるシロ爺とやらに聞き出して、やっと裏売買が行われているらしい港に到着した今日。
途中途中で色んなことがあってか、季節は春の訪れを迎えようとしていた。
「身体は大丈夫なの?あまり無理はしないでくれよ」
「なんのことだ」
「え、そう来る?確かに最近は落ち着いてるみたいではあるけどさ…」
そうやって気にされる方が、かえって逆効果だ。
今まで通り接してくれた方がこちらとしても助かるというのに。