ぐいっと引かれたかと思えば、そのまま私を連れて襖を出た男。

嫌な予感は的中だ。

騒がしい一室の前、その奥からは未だに騒ぎ声の収まる気配がなかった。


火に油を注ごうとしているんじゃないか……きっと、こいつはそういう男だ。



「すみません、どうかされました?少し騒がしいので心配になって」



陽気に声をかけた徳川 景秀。

最初は聞こえていないようだったが、しばらくすると岩のような厳つい顔をした男が苦笑いをして出てきた。



「これは失礼、我々はすぐ退散しようと思いますのでお気になさらず」


「なら退散するのは貴様だけだ、近藤よ」


「芹沢さん、このままでは他の方々のご迷惑になりかねませんぞ。それに今日の親睦会を開いたのは私です、私に責任がありますから」



しかし帰るつもりはないようで、どっかり座る酒乱の男。

苦笑いを続ける近藤と呼ばれた男は困ったように頭を掻いている。



「お二方、よろしければ俺が部屋を変えてもらうよう頼んで来よう」


「なに言ってんだ近藤さん。あんたはお節介が過ぎる」


「だとしても、こうして迷惑をかけてしまったことには変わりないだろう」