「……だから何故こうなる」


「え?」


「私は女だ。花街に来たって何も出来ない」



ここは江戸ではなく、京の都。

だから吉原ではなく島原だとしても、結局は何も変わらないのだ私からすれば。



「まぁまぁ、うまい料理と酒を呑むことくらいは出来るだろ?」


「…酒なんか呑まない」


「たまには冒険も大切だよ小雪。かわいい子には旅をさせろってね」



それに金だってそこまで持っていない。

だから確実にこの男の奢りで間違いないが、…やはり花街というのは目が慣れないものだ。


こんなにもきらびやかで明るい場所は自分には似合わない。

案内された一室には芸者に舞妓、ぼうっと眺めては退屈だった。



「きゃぁぁぁ…!!芹沢はんっ、やめとぉくれやす……!!」


「どうか落ち着いとぉくれやす…っ」



隣の部屋が騒がしい。

酔っぱらいでも暴れているんだろう、壁の先から籠るような怒鳴り声が聞こえた。



「儂(わし)を誰だと思っている…!!天子の芹沢 鴨だぞ!!おのれたかが芸子のくせに生意気な口を!!」