夜が明けぬなら、いっそ。





「こら佐吉っ!!お前はお客様に対して言葉づかいが全然なってねェんだよ…!!」


「親父の教え方が下手なんだっ!」


「なんだとこのガキっ!!」



ピタリと、ふいに足を止めた。


そこは常陸国───。

あれから休み休み歩いて辿り着いた村では、商店街に入って一番に聞こえた声。


買った反物は着物として繕って、周りからは「お嬢さん」なんて呼ばれる頻度が多くなった今日。

寒い北風が吹雪く商店街、私の心はふわっと温かかった。



「お姉さん、この簪似合うよ~?こんなのしたら町の男はみんな振り返っちゃうね!」


「えっ、本当に?」


「あぁ本当さ!良かったらまた来てよ!───いてぇっ!!なにすんだ親父っ!」



賑やかな音。

殴られた中でも、少年の嬉しそうな笑い声。



「ガキの分際でお客様を口説いてんじゃねェ!!それにおツキちゃんはな…、俺が狙ってんだよ…!!」


「知らねーよそんなの…!!歳の差やべぇだろジジイっ!!」


「誰がジジイだ!!テメェ今日メシ抜きだからな佐吉…!!」



入らなくていいと思った。

その声が聞けただけで、心配事なんか既に消えてしまったから。


景秀にも伝えたかった。
佐吉はお前のおかげで救われていると。

やっぱりどこを歩いても、お前の思い出ばかりなんだ。