あの時はまだ人を斬ることに躊躇っていた若き青年が、声を荒げて刀を持って先陣を切っていた。
ふわりと風に靡く、珍しい色をした目立つ羽織。
「新撰組……か。いい組織になったな」
なんて生意気なことをつぶやけば、記憶の中の豆腐のような白い男が鼻で笑ったような気がする。
壬生の狼、なんて呼ばれていた男達が。
1人は鬼の副長、1人は天才剣士、今ではそんなふうに豪語されているらしい。
「…常陸国の奴等にも挨拶をしておこう」
佐吉はどうなったかと、やはり気になる。
小間物屋の店主に匿ってもらえていたら一番だが、そうでは無かったら私の看病でもさせようか。
…なんて。
「それ前に…安い着物が欲しいな」
古くさいものでいい。
誰かのお下がりで十分なくらいだ。
安い反物さえ買えば、自分で繕えばいいだけ。
呉服屋で購入して、人の少ない路地裏を歩いていたとき───
「へっ!貰ってくぜ!!」
「……この野郎、」
サッと盗まれた反物。
すぐに私は転がっていた石をそいつへ投げつけた。
「ぐへぇ…!!いてぇ…っ」