泣かせてしまったことだけが、やはり今も胸を突いてくる。
だけど明けない夜に甘えたんだ俺は。
「お前が木内を殺した暗殺者か…!!」
「そうです。弱かったね、あいつ」
「貴様ァ…!!!………ん?いや、違うぞ、こんなに背丈が大きく無かったはずだ。今より声も高かった」
「…いや俺だよ。暗かったからそう見えただけで、俺が木内 与之助の首を跳ねたんだ」
殺した者を前にして合掌。
それは俺の昔からの癖でもあって、殺しの作法の1つでもある。
相手の命に対する敬意は払っているんだ、こう見えて。
「うわぁぁあああッ!!ぐは…ッ!!」
「ギャァアアアア……ッ!」
だからあの日、お前に会った夜も同じようにして見せた。
あえて見せたんだ俺は。
そいつに気づかせるために。
だけどやっぱり鈍感な女の子だから、なにも気づかないんだもの。
それかお前は隠すことが最後まで上手だったのかもしれないね。
「…許してとは言わないけど、あの子は普通の女の子なんだ。
だから俺があんた達の恨みを全て受け持とう。俺は…生き延びてしまったからさ」
しゃがんで両手を合わせる。
もう2度と顔を合わせられないだろうけれど、俺達が唯一会える季節があるんだ。
それは冬、雪の降る夜だ。
その日だけは、俺とお前は同じ思い出が見られるんだよ───…小雪。



