「それで君は今日、そいつの墓参りにわざわざ京まで来たんだろう?」


「……」


「まぁ、まずは腹が減ってはなんちゃらだ。食べよう小雪」


「……トキだ」



スッと大人しく座ることにした。

伸びてしまった麺を見つめながら、私は全く別のことを考える。


この男の傍を離れない方がいいかもしれない。こいつはきっと、父さんを殺した存在を知っている。

その目を見ればわかる、私を試すような目だった。



「俺はね小雪、お前のことが知りたいんだよ」


「ならまず名前を覚えろ。話はそれからだ」


「ははっ、こりゃ1本取られた」



……別にうまいことを言ったつもりはないのだが。

定食屋を出れば、お腹いっぱいになって機嫌が良くなったらしい。


徳川 景秀は黙るという言葉を知らぬ子供のようにペラペラと京の町に響かせた。



「んー、じゃあ好きなものは?」


「ない」


「あぁすまない。質問が雑すぎたね、好きな花は?」


「ない」



同じように一刀両断。

男は少し立ち止まって、何かを考えているようだった。