夜が明けぬなら、いっそ。





扇子で顔を隠すように泣き真似のようなことをする千代という姫。

しくしく泣いていれば、男は心配してくれるとでも思っているんだろう。


だけど、そいつにはなんの効果はなく。



「いいえ。ただ俺には、あなたのようなおしとやかな大和撫子は似合わない」


「そんなことないわ。私は意外と活気溢れるところがあるのよ」



確かに大人しいだけじゃない。

さっきだってお化粧が崩れて騒いでいたくらいだ。

おしとやか、では無いんだろう。


それでも景秀は優しい顔をしながら首を横に振った。



「足りないんです。俺には、かなりぶっきらぼうで乱暴で…刀を平気で振り回してしまうような、そんな女の子でなければ駄目でして」


「そ、そんな子がいるはずないでしょう…!」


「それが驚くことに居るんですよ。今も俺のすぐ隣に」



ね?と、私に移った眼差し。

どう反応したらいいか分からない中でも浅く頷いておいた。


すると、私の手を包み込むように握ってくる。



「まさか景秀様がそんな好みだったなんて…!そんなのこちらから願い下げだわっ!!」


「え、本当に?どうもありがとうお母さん」


「はぁ!?なによそれっ!!」