「初めまして家茂公様、景秀様。お会いしとうございました。千代でございます」
「……」
こ…れ…は……。
言葉にならないと感じているのは、本人以外の全員かと。
隠せられない小皺。
何度も重ねたと見える厚化粧。
「……景秀、彼女はとても……頭が良いんだ」
「……そう、ですか。……はい」
「まぁなんというか、……話してみなければ分からぬこともあるだろう」
あんなにも楽観的だった景秀を敬語にさせてしまうくらい、それは破壊力抜群のお姫様登場。
こうして見ると親子だ。
景秀より年下の上様と並ぶと、もっと母親と息子だ。
……20ばかしではないだろう。
下手したら30は離れていると見える。
「…家茂公、…なぜ俺を彼女の縁談相手に?」
「…千代姫からの頼みでな。どうやら、お前に一目惚れとやらをしたらしい」
「………それ、たぶん勘違いですよ」
「景秀。口を慎まぬか」
さすがにと、将軍の命令だ。
すぐに景秀も頭を下げる。
一目惚れ……確かに町を歩いていれば何かと声がかかる男ではある。
性格を知ればそんなこと言ってられないと思うが、そこだけに関しては納得も出来た。



