夜風のような君に恋をした

ようやく息が整ったところで、リビングからお母さんが顔をのぞかせた。

「ただいま」

「どうしたの? そんなところに突っ立って。ご飯あっためるから、早く入ってきなさい」

「はーい。今日のご飯なに?」

「ハンバーグよ。雨月の好きな大根おろしとポン酢も用意してるから」

「わーい、やったあ。先に手洗ってくるね」

バレないように額の汗をぬぐいながら、笑顔を作る。

「塾はどうだった? わからないところ、ちゃんと先生に質問してる?」

洗面所に向かっていると、背中からお母さんが声をかけてきた。

「うん、してるよ」

「そう。何度も言ってるけど、勉強はわからないところをなくすことが大事なんだからね」

「うん、わかった」

勉強、勉強、勉強。

どうしてズタボロな心の私に、この期に及んで、お母さんはこんなにも追い打ちをかけてくるのか。

お母さんは、私そのものが大事なわけじゃない。

“勉強ができて、問題を起こさない子供”が大事なんだ。

お兄ちゃんでは無理だったから、私だけでもって思ってるんだ。

自分の親としてのステータスを補正するために……。