お兄さんのことを話してくれた彼女は、いつになく澄んだ目でまっすぐに俺を見つめてきて、嫌われているようには感じなかったのに。

むしろ、好かれているんじゃないかと期待してしまうような、柔らかな表情だった。

それなのに、どうして……。

「どうした? さっきからボーッとして」

「いや、別に」

様子のおかしい俺を、心配そうに見ている一輝。

一輝を安心させるように、俺はまた笑って誤魔化した。

一輝は優しい。俺のことを心底好きなのが、見ていてわかる。

だからこそ俺は、やっぱりときどきつらくなる。

俺は決して、そんなに優れた人間じゃないから。

俺が本当は死にたがりのどうしようもないやつだってことを知っているのは――この世でたったひとりだけなんだ。