夜が、こんこんと更けていく。

俺はひとり高架の欄干に両腕を預け、目下に流れゆく車のヘッドライトを眺めていた。

車の量も、徐々に減ってきている。

時計を持っていないからわからないけど、おそらく、午後十時前あたりだろう。

「はあ……」

闇に沈み込みそうなほど、深いため息が出た。

俺の失望感を煽るように、冷たさを孕んだ秋の風が横から吹きつける。

雨月は、塾があるはずの水曜日も金曜日も、ここに来なかった。

そして今日は、週が明けた月曜日。今夜も来なかったから、これで三回連続だ。

「俺、何かしたっけ……?」

あの日、雨月は様子がおかしかった。

『どうして居場所がないだなんて言ったの?』なんて、少し怒ったように聞いてきて、俺は思わずムッとしてしまった。

雨月にだけは本当の自分を見せているのに、そんな言い方されたら悲しすぎる。

今にして思えば、その問いを投げかけたとき、雨月も悲しげだった。

何か、つらいことがあったんだろうか?

ちゃんと話を聞いていたら、分かりあえただろうか。

ひとりの夜は、長くて終わりがない。

こうして先の見えない闇を見ていると、このまま埋もれて、沈んで消えてしまいそうだ。

家に居場所がない疎外感、そして学校での偽りの自分に対する嫌悪感が、ドロドロとした見えない手となって、俺を追いたてる。