「学生時代に友人だった人から恋人として付き合いたいって言われて、一緒に居ると楽しかったし、恋人になってもこのままずっと一緒にいられるって思ったのに」

「思ったのに?」

このバーテンダーは話を聞き出すのが上手い。

「三ヶ月ほど経った時に彼の浮気がわかって、しかもそれが私の元友人、元と言うのはその時に友人として付きあうのはやめたから」

「なんだか、元カレも元友人も酷いな」

「しかも、元カレが彼女は護ってあげないといけないけど、ずっと友人として見てきたら君は一人でも大丈夫だからって、大丈夫な訳あるか!って、感じでしょ」

「それって、自分の浮気を正当化しようとする陳腐なセリフだよね」

そう言って、眉を顰める姿にキュンとするついでに、グラスを渡してロックのおかわりをする。

「そのくせ、卒業式の日にそいつに声を掛けられて、あの時は悪かったって。あのあとすぐに、元友人と別れたからって言われても。だから?って感じでしょ」

「そうだね」
と、答えながらスマートにロックがテーブルに置かれた。

「同期入社で5年間友達だった。何でも言えたし、お互いよくわかっていると思ったんだけど、私は何もわかってなかった。彼にとっては次の彼女が出来るまでのつなぎだったのかも知れない。

「5年間も友達だったのが恋人になるってむしろ、つなぎなんてコトはないんじゃない?勘違いとか?」

「それは無い!私よりもうんと若い女の子にエッチが忘れられなくて~とか言われていたし、給湯室にいたんだけど『ここでしよう』とかなんとか言っていたし。なにより、追いかけて来てはくれなかった」

さすがに、追いかけても来なかった話を聞いたべーテンダーは「あああ・・・」と言葉にならない声を出した。

「でもね、なにより悔しかったのはリアルオフィスラブに憧れていたのに、相手が私じゃなくて浮気相手だったってこと!私も熱いリアルオフィスラブがしたい!」

「ぶはっつ」

高らかにリアルオフィスラブしたい宣言をしたときに隣から笑い声が聞えて慌てて振り向くと人生終わったかも的な相手がそこにいた。