茂がハッとした表情で見つめてきた。

「まさか、確かにバカな事をしたのは本当に申し訳ないと思っているけど、関谷さんとはきっちり別れている。雪と二股なんてかけてない、それだけは本当だ」

真剣な表情から本当に二股はしていないんだろう、そう信じたい。

「ただ、最近になって何度か待ち伏せされたりしている」

「ストーカーってこと?でも、1年前に終わってるんでしょ?」

「オレは、そのつもりだった」

「つもりって?Ayaはそう思ってなかったって言う言い方ね」

茂はため息をついて「ああ」と力なく答えた。


「雪に話すのも変な感じだが、関谷さんとその、そういうことをしたのは2回だけでこんな写真を撮られていることも知らなかった。どちらにしても、これはオレだけの話では無いということだ。オレは今も雪が好きだ、その気持ちは変わらないがオレが今までいい加減だったせいで嫌な思いばかりさせてしまって本当にごめん」


茂は両手をテーブルにつけると頭を下げた。

「私ではこの問題は解決できないから」

「解ってる、あとはオレがなんとかするから」

Ayaは森川彩香ではなかった。
写真の人が賢一ではなかったことはほっとしたけど、あんなふうにしつこく電話のコールをならす彩香というのはいったい誰なんだろう。

賢一とはどんな仲なんだろう?



パシャ


「え?」

頭上から水が落ちてきて髪の毛を通りテーブルに滴っていく。

茂が立ち上がり誰かの腕を掴んでいる。

周りがざわつく


ゆっくりと顔を上げると、前にこのファミレスに来たときに出口のところでぶつかってきた女、ファミレスの外から窓を見たときに茂の前に座っていた女。


「関谷さん、何してるんだ」


「関谷絢」


全てがスローモーションのようだ。