半歩後ろに下がりながらも、どこか納得していないような顔をする朝水那吏様は、怪訝そうにわたしを見下ろして。




「……葉柴サンが好きなのは、兄さんでしょ。なら、おれのことを秘密にする理由には、ならないんじゃないの?」




その言葉に、思わずズダンッッ!!と、廊下の壁を挟んで、朝水那吏様を壁ドンしてしまった。しかも両手で。

しかし、この時のわたしには、そんなこと気にならず。




「朝水那吏様はご存じでしょうか〝また逢えたなら、きみと夜明けを〟の舞台挨拶でナルくんが家族への愛を語っていたことをそしてそこでわたしは初めてナルくんに弟さんがいることを知ってどれだけ大事に想っているのかも知りました推しが愛しているものをファンが愛さないなどそんな奴は真のファンと呼べません恥を知りなさいです」

「………(顔近いしこわいし勢いすごい)」

「よってナルくんのご家族はわたしにとって崇め奉るべき存在なんですまずそれをわかってもらわないと話になりませんそして─────」




……そんな風に、わたしが推しへの愛を拗らせきっていた時。

朝水くんが密かに千住くんへとアイコンタクトを取って助けを求めたことを、残念ながらわたしは把握できず。




「……なあ、お前の友達那吏に何やってんだ?」

「え?…………、……り、凛琉何やってるの?!?!朝水くんめちゃくちゃ怖がってるから退いてあげて!!」




このあと、真生に引き剥がされるまでぺらぺらと口が喋り続けたことと、そのあと土下座して謝罪したことは、言うまでもない。