そこは少しくらい否定した方が、私の見る目が変わったかもしれないのに。
ジルのそう言う所があるせいで、本当に油断できない相手としか認識できないじゃない。
最初出会った時に自分よりも私のことを心配してくれたのは、あれは本心だったと信じたいのに。
あの時の声掛けすらも私にそういう女の類で近づいたとか思われたのは、ちょっとショックなんだけど。
……って!さっきからなんで私ばっかりこうも動揺しなきゃいけないんのよ。
いつの間にか、私のすぐ隣に立ったジルに意識を向けないようにと必死だ。
「そういうお前は色目というものを使えば、少しは男も寄ってくるかもしれないぞ?」
「お生憎、私は婚約者に捨てられたばかりの身よ?次から次へと新しい出会いなんかに目がいくほど馬鹿じゃないのよ。というか、私はフェイムをそういう目で見てないし、そんな事に興味ないってば!」
未だに話の中心が私がフェイムを襲おうとしたことになってるせいで、そんな話題になっている。
初恋すらまだな私に、異性に色目を使うなんて出来っ子ないっていうのに。
「へえ。捨てられたことで多少なりとも傷は負っているわけ?」
「傷なんか負ってはいないわよ。あの人との間に恋はなかったし、私をこの国に縛り付けておくためのものだったわけだし。政略結婚ってそんなものじゃない?」
初めてクリフ王子と出会った時にときめいていたら話は別だったかもしれないけれど、残念ながら一目惚れなんてこともなかったし、恋心なんてものは生まれなかった。



