「そんな王家の人間に、今回の件を伝えた所でまともに動いてくれるとは思えないんだ。証のクリスタルがないと騒ぎ立て、本当に国外追放の判決を下されるのも時間の問題じゃないかと思う」


「じゃあこの現状を野放しにして城へ戻って報告しろってか?この聖女を追放されたら結界が壊れ、この国の魔物が自ずとシェルアバドに流れ込んでくるぞ」


そうだ……私がもし追放されたら何千年と歴代の聖女達が紡いできた結界は維持できずに、迷宮から魔物が溢れかえることになる。


ずっと守り抜いてきた人々の平和を、大好きな国をこの手で壊してしまうと思うと自然と手が震えた。


そんな大きな問題を抱えているというのにも関わらず、クリフ王子は欲を満たすために私を追放しかねない。


ここはクリスタルが壊れたことを黙ってギリギリの所まで聖女としての務めを果たす……それしかないのだろうか。


「方法は一つだけある」


フェイムの口から出てきたその言葉に、無意識に体が動き彼の肩を掴んだ。



「っ!!その方法を教えて!!」


「え、ええ。リゼさんはここから南にある、精霊レヴィローラの大森林のことは知っているかな」


「……一応は」


問いかけてくるフェイムの肩から手を離し、頭の中の棚を探り出す。