落ち込む私の元にいつの間にかやって来たジルが、私を立ち上がらせると不意に唇に優しい温もりが灯る。
それがキスだと気づく頃には、彼の顔は遠ざかっていた。
「雇われてやるよ……俺の聖女様。護衛の役割でも夫としての役割としても、な」
何故か勝ち誇った笑みを浮かべて、フェイムと共に言い合いをしながら砦に向かっていく二人を見つめて、また上がった熱に溜め込んだ感情が爆発して叫びそうになる。
「聖女を誑かさないでよっ……!」
半分からかって遊んでいるジルに吠えるようにして言うけれど、ジルからしてみれば子犬がキャンキャンと吠えているようにしか思わないんだろう。
そんな様子を退散していたはずの大工達……だけでなく、面白いことが始まったと仲間を引き連れてきた砦の兵士達や、村の住民達が祝福の声と笑い声を響かせた。
響く声に反応した手に持っていたクリスタルも、一緒に笑うようにその身を眩しい光を輝かせて――私を祝福していた。



