「なに、(りん)、どしたの?」


(つむぎ)ちゃんが、固まったわたしを訝しげに見た。


中学は違うけど、前の席だからと話しかけてくれて、よく一緒に過ごすようになった、元気な子。


「今の放送、一年生のひとだったから、びっくりして。もう一年生が放送してるんだね」


わたしなんて、まだなーんにもしてないよ。


書道部はのんびり週一活動で、静かにやれるのがいいなと思って選んだので、今週の金曜日にならないと筆さえ持たない。

まだ自己紹介もしてないから、今週は筆を持たないかもしれないくらい。


「放送部のひとでしょ? 自分から放送したいって言うひとは、さすが聞き取りやすいね」

「ね。もう仕事覚えてすごいねえ」

「先輩は近くにいてくれてるだろうけどね。あたしだったら緊張して噛む自信あるわ」

「わたしも。放送部にはなれないや。すごいねえ」


青木くんかあ。


どこのクラスのひとなんだろ。出席番号、前の方だろうなあ。


聞きやすい声。

一年生ながら、癖のない読み方。

決して噛まない丁寧さ。


週に何度か聞こえる青木くんの名前が、全校に浸透するのに時間はかからなかった。