一片の枯れ葉が、私の肩にカサリ、と落ちた。
私はそれをそっと手に包んで、立ち尽くす。




きっと、こんな風に人を想うことは、私のまだ短い人生の中で、初めて過ぎることで。
それゆえに、どうしてらこの苦しみから逃れられるのか、心の影から抜け出せるのか、全然良い方法が分からない。


「今までの恋ってなんだったんだろ…」


そう口にして、歪んだ笑みを作った。

冷たい風が、私の頬を撫ぜる度に、届かないという現実に心が打ちのめされて辛い…。

でも…。


「あーやっち!あのさ?今日も一緒に帰れる…?」

「…それは、また練習を見に来いってことでもあるよね?」

「あー…うー…そうなんだけど!でも…オレあやっちと帰りたいなーって…」

だめ?


そんな風に、しゅーんと尻尾を落として言われてしまうと、特に別の用事もない私には断る選択肢なんてどこにもなく「いいよ」とOKを出す以外ない。

「じゃあ、その代わり、今日は私の買い物に付き合ってよね!」


なんて、誘いを受け入れてしまったことに照れを感じて、それを隠すように付け加えた。

すると、途端にパァーッと顔を明るくして、ぶんぶんと尻尾を振る(ように見える)翔太。


…ちょっと、ちょろすぎるでしょ…。


私は、そうも思いつつ、心底嬉しそうに笑い掛けてくる翔太に、つられて笑うしかなくて、

「そうと決まれば、さっさとウォーミングアップして、さくっと試合に勝って、あやっちと帰る!」

「なんか、それきいたら丹下先生怒りそうだね」

と、笑った。


心地いい、翔太との時間。
とくん、とくん、と優しく弾かれる心の音。

これが、特別な想いだったら…良かったのに。

私はまだ、彼に囚われがんじがらめになっている。

じゃあ…この一線をどうにかして乗り越えて、ぶち壊して…翔太へと身を委ねられたらいいのに。


「あー…ずるいな、私って」


あんなに、献身的に私を癒やそうとしてくれてる翔太を、裏切ってしまっているようで、ぎゅっと胸の辺りが痛んだ。


こんな気持ちは知らない。
こんなに、苦しい想いは…。


だから、答えを知りたくてまたもがく。

手を伸ばして、この手を取ってくれるのは…一体これから現れるんだろうか?

こんな私をココから掬ってくれるのは、誰なんだろうか…。

私は、それだけ頭の中で思いながら、ゆっくりと帰り支度を整え、体育館へと向かった。