頼む。
ちょっと待ってくれ。
マジで。

そもそも、今は本当に、平日の昼休みなんだろうか……?
それともこれは、仕事が忙しいあまり、現実逃避をしたくなった私が見ている白昼夢だろうか?

「どうした?」

呆然とした私の表情に何かを感じ取ったのか、目の前に座っている鬼上司……改め……先日より激甘彼氏に大変貌を遂げてしまった加藤涼介マネージャーが話しかけてくる。
というのも。

「あのぉ……加藤さん……?_

私が加藤さんと呼ぶと、「名前で呼んで」と所構わずリクエストしてくる加藤さんに、ぎろりと睨まれるのだが、それはいつものようにスルーするとして。

「すみません、私……普通にランチと聞いて来たんですけど」
「そうだけど」

いや、さらっと言われても、余計困ってしまう。
何故なら……。

「こんな、豪華なフレンチって聞いてないんですけど!?」